メンテナンスをしないALCがもっとも漏水する
「ALC造と言われるものがなにか」については”ALC造は存在しない”の記事で説明しました。上記の記事でも述べたように、機能性や価格面がとても優れているため鉄骨造(S造)の建物ではALCボードが採用されている割合がとても多いです。しかしALCボードには外壁材として致命的な欠点があることも事実です。主観としても建物の診断や修繕を行っていくなかで、漏水の問題が起きている建物がALCである確率は高いです。ではなぜALCは漏水が起きる可能性が高いのに多く採用されるのか、致命的な欠点はなんなのか、どのように修繕すべきなのかを見ていきたいと思います。
ALCボードが採用される理由
1.軽量な外壁部材である
「軽量気泡コンクリート」と呼ばれるように、ALCは内部に気泡を含むコンクリートです。重量はコンクリートの4分の1程度に抑えることができるため、建物への重量負荷を抑えることができ、軽量な分施工性もよくなるためコスト削減にも繋がります。
2.断熱性が高い
ALCは他の壁材の中でも断熱性のが高いものの一つです。コンクリート内部の空気層が断熱材の役割を果たすため、熱伝導率はコンクリートの約10分の1と言われています。
3.耐火性が高い
材質がコンクリートであるため、火や熱に強く、有害物質が発生しないという利点があります。火に弱い鉄骨造や木造で使われるため、隣家からの延焼を抑える観点からも理にかなっている壁材と言えます。
4.遮音性が高い
断熱性と重複する部分ではありますが、コンクリート内部気泡が防音の役割を果たすため遮音性を高めることができます。ALCボードは防音壁として使われることもあるほど遮音性が高いと言われています。
ALCの外壁材としての致命的欠点
1.ALCは吸水性があり水を吸ってしまう
ALCは多孔構造であるため、防水性はなく吸水性があります。コンクリートはアルカリの性質を持っているため雨など酸性の水分を吸収してしまうと中性化が起こり、コンクリート自体の耐久性が著しく低下してしまいます。寒冷地などでは吸収した水分が凍ることでひび割れの原因になります。
2.シーリングを多用する構造
ALCボードは規格の決まったサイズのボードをはり合わせる仕様のため自ずとジョイント(接合)箇所が増え、シーリングで処理をしなければいけない範囲が増えます。その上ALCの吸収性があるため少しでもシーリングが細ってくると水分が入って行く道を作っていってしまうためボードの劣化を促進しやすい状況が生まれてしまいます。
ALCボードは使うべきではないのか?
ALCボードの採用理由と欠点を見て来ましたが、印象はいかがでしょうか。上記のような説明をするとALCボードを使わない方がいいのではないかと思われる方が多いですが、私はALCボードは壁材にとして良い部材なので採用されるべきだと思っています。採用理由からも分かる通り、ALCの利点は多岐に渡りますが欠点は浸水に弱いという1点であり、建築時防水塗装と以後のメンテナンスによって欠点を埋め合わせることができるからです。
まず、施工時に関してですが防水仕上げがされないことはよっぽどの不良施工でない限りありえません。吸水性が高いため保護をしなければ数年と持たずにボードがダメになってしまうからです。しかし、メンテナンスに関してはしっかりとした目で修繕時期を見定める必要があります。長くなりましたので”素人でも分かるALCの劣化診団方法“で記述させていただきます。
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